妊娠のリミットは閉経ではない!?

74歳で父親になった歌舞伎役者の方はいますが、若々しく見える芸能人女性でも母親になった方の最高齢は40歳代半ば。日本人女性の平均閉経年齢は51~52歳ですので、もう少し高齢で出産される方がいてもおかしくはありませんが、少なくとも有名人といわれる方々の中にはいませんよね(※)。なぜ女性は、高齢になると妊娠が難しくなるのでしょう。実は、卵子と精子のつくられ方の違いが大きく影響しているのです。

※卵子提供を受けたことを公表されている方はのぞきます。また、2012年に海外での6年間に及ぶ不妊治療のすえに妊娠、53歳で出産されたタレントさんがおられますが、ご自分の卵子なのか卵子提供なのかは公表されていません。

精巣は精子製造工場。製造工程は74日ですが、毎日できたての精子が誕生。

精子の役割は、父親の遺伝子情報を卵子のもとまで送り届けることにあります。遺伝情報のつまった核が格納されているのが、精子の頭部。まるで大事なデータを守るかのように、頭部は先体と呼ばれるヘルメットをかぶっています。尾部へと続く中間部には、エネルギーをつくり出す器官のミトコンドリアが入っています。このミトコンドリアが生み出すエネルギーを使って、精子は尾部を動かし、卵子を目指して泳いでいくのです。

思春期を迎えると、精巣内の精細管で精子がつくられはじめます。脳下垂体から分泌されるホルモンFSHの刺激を受け、精原(祖)細胞から精母細胞、そして精子細胞を経て、完全な精子がつくられます。製造に要する期間は74日間。その後、精巣から精巣上体へと移動し、ここで約14日間をかけて成熟します。74日+14日=88日と、およそ3カ月で射出可能な状態となるわけですが、このような段階を迎えた精子(出きたての細胞)が毎日誕生しているのです。

卵巣は卵子保管庫。卵子の製造年月日は「年齢+数ヶ月」前なのです。

ところが卵子のほうはというと、その役割こそ、母親の遺伝情報を受精卵に引き継ぐことであって精子と同じなのですが、卵子がつくられるのは母親自身が胎児だった頃、つまり「年齢+数ヶ月」前のこと。母親が誕生した後、卵巣内で新たに卵子がつくられることはありません。精巣は精子製造工場ですが、卵巣は卵子保管庫なのです。

卵子は、袋に包まれた原始卵胞のかたちで、卵巣内で眠っています。誕生時の原始卵胞数は、およそ200万個。思春期を迎えると、複数の卵胞が目覚め、成長を開始します。発育をはじめた卵胞の中から、毎周期、1個のみが最終的に成長して、成熟した卵子1個が排卵されます。こうして排卵がはじまる思春期までに、原始卵胞の蓄えは自然に30万個くらいまでに減っているといわれています。

卵巣は、高機能な保管庫ですが、卵子の質が保たれるのは30歳頃まで。それ以降は加齢にともない、ゆるやかな質の低下がはじまります。そして、35歳を過ぎるとその下降線は急になり、38歳、40歳と角度を増して、卵子の質は急激に落ちていってしまうのです。女性の加齢とともに妊娠率が低くなったり、それとあいまって流産率が高くなったりと、赤ちゃんを産むことが難しくなってくるのは、卵子の質の低下により、受精卵の偶発的な染色体異常が増えるためだといわれています。

妊娠には、リミットがあるのです。そして、その鍵は卵子の質が握っています。結婚するもしないも、子どもを産むも産まないも、不妊治療を受けるも受けないも、個人の幸せのかたちは様々あってしかるべきです。ただ、みなさんが妊娠のリミットの存在を知ったうえで、ご自分の(ご夫婦の)道を選ばれていることを願ってやみません。

情報更新日:2021年12月9日


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